著書・学術論文 子どもと咲く花 せんせいのすてき

信念 ・・・2歳児

 

その顔は、覚悟に満ち、心臓はバクバクといっているにもかかわらず、

まっすぐと私を見つめていた。

 

僕は、これからも、かむ。

 

その顔はそう言っており、

実際に、「またかむ気か」と尋ねる私に、

「うん」とうなづく彼であった。

 

そこで、長丁場になることを覚悟して、

私は、彼を膝に乗せ、

いかに、友だちをかむことがいけないことか話を始めた。

おひげと尻尾が生えて、ライオンさんになってしまうというと、

なってもかまない、といっていたが、

遠くて広いところに住むことになるから、

もう、お母さんとお父さんには会えませんよ、

というと、それは、嫌だなと思ったらしかった。

 

ライオンさんになってもいいのは、強いからである。

そう訊くと、彼は「うん」とうなづいた。

結局のところ、友だちに負けないために、

彼はかむという方法を選んでいることが、

長いインタビューの末わかった。

彼の行動には、その他、どこか

水戸黄門的勧善懲悪的侍みたいな雰囲気も感じられる。

 

負けんために、最高の武器を使って何が悪い。

というわけである。

 

これは、間違っているが、ある意味、間違っていない。

だから彼は、「これは俺の信念だ」と、私に立ち向かったのである。

 これはある種、感動であった。

 

 

しかし、それは許されんことである。

世は、サバイバルだが、暴力はいけない。

楽しいことだって、たくさんあるじゃないか。

というわけで、「いかんことは、いかん」と伝え、

プラス、友だちと笑い合えて楽しかった、という場面を、

印象づけていこう、ということになった。

 

ちなみに、彼はこの長いインタビュー的対話以降、

かんでいない。

なんやわからんけど、この方法は許されんということが、

自分の信念を通した先にあったからではなかろうか。

許されはしなかったが、わかってくれた、

ということも大きいだろう。

 

小さな身体には、とても大きな心がある。

 

子どものすてき。