著書・学術論文 子どもと咲く花 せんせいのすてき

つけてあげたい 

2019年12月10日

 

今年の年中さんは、「まる」という形に着目して、

作品展に取り組んだ。

Yくんの「まる」への思いから始まった取り組みだったが、

森では、丸い断面に着目して、活動をしてきた。

木や実の断面は美しく、自然と彼らの目を引く。

そうしてできた自然物による子どもたちの作品は、

大変すばらしいものだった。

丁寧さとバランス感覚とそれぞれの思い。

年中児の100パーセントが表現されていたと思う。

 

そして、森から身のまわりの「まる」に視点をうつしてみた。

ご家庭にご協力いただいて、生活の中の「まる」を集めてみると、

プラスチック製品がほとんどで、これには、考えるところがあったが、

ゴム製の派手な色の球体にくっつけると、

結果的にすばらしい現代アートになったのだった。

ファンシーでいきいきとしていて、

今にも動き出しそうな元気さがあった。

 

だが、ここにも先生たちの涙の努力があった。

何しろ、球体にくっつけるので、全然、くっつかんのである。

たとえば、ヤクルトの容器とか、ガチャガチャのプラスチックケースとか。

瞬間接着剤は、瞬間でくっついてくれず、

ある程度持っていなければならなかった。

そこで子どもの直観においつくために、とりあえずガムテープで貼って、

あとから保育者がくっつけた。

しかし、時間がたつとポロ。

と落ちることが何度も繰り返され、

先生たちの心は折れそうになった。

後半は、ドライヤーが導入され、

あらたにもっと強力な瞬間接着剤を買ってきてくっつけ、

ついでに私の指もがっちりとくっつけてくれた。

みちこ先生がはがし液を買いに行ってくれた程である。

 

そうして、あらゆる努力を重ねていても、

 

ポロ。

 

という音が、断続的に響く。

 

しかし、先生たちは4人がかりで交代しながら、

頑張った。

だがしかし、どうあっても落ちてしまう代物もあった。

もうあきらめるしかないか・・・、

という雰囲気が漂よったが、

担任のA先生が、

 

「それは、Mちゃんがすごく頑張って作ったので、

(ぜったい)つけてあげたいです。」

 

といい、それを聞いたN先生も、

 

「それは、つけんといかん。」

 

といった。

 

子どもたちの心に寄り添い、

子どもたちのエネルギーに触れ、

自然に湧き出る保育者としての心。

毎晩、どんなに遅くなっても、手を抜かない先生たちの姿には、

いつも子どもを思う心が見える。

 

そうして、やっとくっついた!

と安堵感に包まれて帰った次の日。

見事に、ボトボトと落ちてくれていた。

 

ショック。

というより、「そうすか。」という気持ちだった。

 

だが、バザーの前日準備で来てくださっていた保護者の方々は、

みんなそれが「展示かと思った」と言ってくれた。

 

なるほど。

 

確かにそう見える。

すると、アートな感性豊かなSさんが、

「生れ出て、剥がれ落ちるというような、

生と死、みたいなものを感じる」

といってくれた。

これは、非常にビンゴであった。

まさしく現代アート的メッセージではないか。

 

Sさん天才。

 

というわけで、

 

どうしても、つけておきたいものをつけて、

落ちたものは、もう、落ちたままに、

ということで落ち着いた。

 

初めての試みで、予想がつかず、

大変てんやわんやだったが、

若草幼稚園にポップで生き生きと弾む現代アート、

という新たな歴史を刻むことができた。

 

なんでも、やってみんとわからんです。

若草幼稚園のすてき。