始業式から、子どもたちが鬼のうわさを始める。
微妙にはぐらかす先生たち。
そのうち、特に年中さんの中に、
ただ怖がっている子どもが結構いることがわかる。
そんなわけで、これは一つの乗り越え体験であるから、
ただ怖がるんじゃなくて、怖がる自分が頑張った自分で終えられるよう、
本番までに気持ちを整えていきましょう、
はっぱをかけていきましょう、ということになる。
それで、先生たちもいろいろと工夫をする。
以前は、魔女だのどろぼうだの、
てんでばらばらに思い付きで命名されていた森の洞穴も、
今では、「鬼の家」として定着している。
その鬼の家に行って、肝試しをする。
ミーティングで、「あの洞穴、どう考えてもでっかい鬼が住めんやろ、って
気づく子おらんのかしら。」と言っていたら、
4歳児のMくんが、ふと、こんなところに鬼が住めるのかと、
疑問を呈したとのことである。えらいっ。
他の子たちは、肝試しが終わって鬼がいないことが分かると、
すっかりその場所に居座って、
「ここで寝るのかなぁ。ここでご飯食べるのかなぁ」
などと、お話しする。
うーむ。
寝るわけないのよ。
第一、入れないのよ、入り口が狭すぎて。
だが、そんな客観的事実に目を向けていると、鬼の気分は壊れる。
そんなこんなで、本番を迎えた子どもたち。
参観日に来た卒園児たちが、不穏な動きを始める。
妙な躁状態で、鬼が入ってくるだろう門の入り口に固まっているので、
5寸くぎを刺しに行く。
そうして、無事、それぞれの気持ちを奮い立たせ、
子どもたちは、鬼と闘ったのだった。
鬼には、子どもたちが頑張って豆を投げたら、
その頑張りを受け止めて、ひるんでくださいとお願いしてあったが、
なんとも見事な演技に、きっと本性は俳優だろうと思った。
それで、今年の生贄は、2歳担任のN先生だった。
渾身の抵抗ぶりがなかなかよく、鬼たちも本気でひきずっていた。
そして、2歳さんは、
「かえして!」
と本気で叫んでいた。
子どもたちの「鬼は~外!」の声が大きくなる。
そして、福の神登場!
てん、てけてけてけてん、の曲に合わせて、福の神が鬼をやっつけていく。
さて、2歳さんと3歳さんは、この展開についていけなかったようである。
「なに?なんなの?何が起こってるん・・・。」
と固まる。
さらに、新たな敵か?と誤解した2歳さんは、もっと固まる。
だが、年中さんと年長さんは、何が起こっているのか非常に理解していた。
それで最後に、福の神に「ありがとう」と、
自然に感謝の言葉を継いだのだった。
助けてくれたことを実感する裏側には、
自分はできることをやったという思いがある。
そんなわけで、まめまき乗り越え体験は、無事成功に終わった。
そして、鬼たちの控室では、
鬼と福の神の癒着関係を示す、記念写真が撮影されていた。
子どものすてき。
大人のすてき。