今年もさらわれたのは、ふきこ先生だった。
子どもたちも、この抜き差しならん一日を迎えるにあたって、
さまざまなうわさを立て始める。
過去には、新人が連れ去られると看破した子もいたし、
今年は、ふきこ先生はもう連れ去られたから、大丈夫説が流れていたが、
担任のふきこ先生は、それを利用して、
先生は大丈夫だからと「お祓いの豆箱を作らない」という、伏線をはった。
当日、本当に連れ去られた時の子どもの静かになりぶりは、
実に緊張感に満ちたものであり、世界が一瞬止まっていた。
そして、ふきこ先生は、自力でこけながら逃げてきたわけだが、
なぜ、逃げることができたのかは、子どもたちの最大の関心事であり、
それを見越して作っていた話は、瞬く間に、全園に広がったようであった。
だって、2歳まで知ってんだもん。
それは、「柊の葉っぱをたまたま持っていたので刺してきた」というものであり、
そのために、ふきこ先生は、わざわざ森の服を着てきたのである。
我々の仕込みは、完璧である。
ちなみに、鬼との打ち合わせも完璧であった。
それでも、予定通りにはいかんのが本番である。
最後、福の神にやられるシーンでは、
福の神にやられながら、3人で一周するはずであったが、
なぜか二人はやられているのに、一人が遠くに離れており、
予定通りの方向にまわると時間がかかると判断した離れ鬼は、
福の神のパワーで吸い込まれる~、やられる~、
という臨機応変の演技にて、福の神にやられにいったのであった。
ところがそのときには、もう一人がすでに退散を始めており、
その鬼は、予定通りに、みんなが退散しないので、
「あり?」と立ち止まり、もう一度やられにいったのであった。
ちなみに、この鬼は、登場シーンでも、
思いのほか門の鍵がややこしかったため、
「あり?」となったのであった。
すんません。
前置きはこのくらいにして、
みちこ通信に入ろう。
節分明けのはと組。
2歳児たちが、よってたかって、こんなふうに話をしてくれた。
「鬼が来て、ふきこ先生をつれていった!」とHくん。
「トゲトゲの葉っぱがあったから、逃げたが!!」とYくんにSちゃん。
「福の神が、トゲトゲでやっつけて・・・、鬼が逃げたが。」
とわぁわぁであった。
例年の報告は、「鬼が来てこわかった。」とか、
「赤鬼が強かった。」ぐらいのものだが、
(ちなみ今年は白鬼がこわかったらしい)
今回は、本当に連れ去られたので、実に詳しい説明があった。
そんなこんなで、遊びも鬼ごっこである。
私が鬼になって、子どもたちを追いかけると、
「わー!」といって逃げる子どもたち。
そして、豆を投げるふりをするAくん。
そうして、反撃をはじめる子どもたち。
「あいたた~!」と演技しながら、また追いかける。
それでつい、節分の結界線だった、
白い線のなごりに入ってしまうと、
すかさず、「ここに鬼は入らんが!」とSちゃんに注意をうける。
子どもにとっては、非常に大事なことである。
疲れてきたのか、
鬼のリアクションが怖くなってきたのか、
Eくんが、急に、追いかけている私にこういった。
「みちこ先生に、なぁれ!」
その手は私に魔法をかけている。
あまりに予想外だったため、一瞬目が点になったが、
クルリと回って、かわいいポーズをとってみた。
「やった!」と喜ぶEくん。
そして、みんなで手をつないでお部屋に帰った。
楽しかった。
子どものすてき。