彼には、ある種のツボがあり、
そのツボが外れるとすさまじく怒って泣く。
小さい頃は、そのまま後頭部からひっくり返って泣いていたので、
頭を守るために、後方に座布団を置いておくこともあった。
私は、そんなふうに怒る彼を見ると、
どうしてか、あっかんべ~をしたくなる。
そんな彼が、倉庫にひっそりと隠されてあった泥団子を手に取った。
ちなみに、何かを倉庫で探していると、
「なぜこんなところに?」という隅っこに、
さら粉がいっぱいに詰まったバケツとか、
固くて干からびた泥団子が出てくる。
Yくんが、その泥団子を持っていこうとするので、
「それは、持って行きません。
代わりにまみこ先生が作ってあげる。」
といって、あきらめさせる。
そして、ちょいとまだ柔らかめの泥団子を作ってから、
「はい、Yくん。
どうぞ。」
と渡す。
彼は、それを持った途端「むにゅ。」となったことが許せず、
「やわらかい~!!」
と怒って、それを投げ捨てた。
「あ~!やったな~!」
と私はそれを拾い上げ、
「もっと、固くしてあげるから、
固くして下さい、
と、言いなさい。」
という。
彼は、わめいていて、聞く耳持ちません、
という感じであったが、
私がもう一度、強い口調で繰り返すと、
「もっと、固くして下さい。」
と言った。
そこで、ちょいとさっきより固い泥団子を作り、
それを彼に渡す。
「ふんが~。」となりそうな矢先に、
「はい、もっと固くして下さいは?」
と言う。
彼は頑張って、「固くして下さい。」と呟く。
そこで、今度は本当に固い泥団子を持っていった。
彼は、それを指先でぐーっと持って、固さを調べる。
結構、慢心の力を込めていたので、
あぁ、割れたらどうしよう、
と思ったが、無事割れず、彼はそれをお気に召した。
すると彼は、偶然傍らにあったさら粉を、
その泥団子にかけはじめた。
さら粉を集めていた女子たちは、何も言わず、許してくれた。
彼にとって、泥団子作りはこの過程なんだな、と思った。
しかし、彼はかけているだけで、ちっともこすっていないので、
こすり方を教えた。
帰り、Yくんに会って、
「泥団子また作って下さい、って言って。」
と、また無理矢理言わすしつこい園長に、
小さい声で、「また作って下さい。」と応えたYくんであった。
子どものすてき。