Kくんが、お母さんのそばでめちゃめちゃ泣いている。
なんと、朝来る前に、お兄ちゃんとタッチできなかったことが、
悲しかったらしい。
「まあ!!
お兄ちゃんとタッチできんで泣く弟なんか、初めて見た。
なんてすばらしい弟かしら!」
と多少とんちんかんなことを言ってみるが、
効力はない。
だが、ともかくお母さんには時間がない。
というわけで、抱っこして預かる。
そして、担任の先生へ。
しかし、なんのツボか、ちょっとしてさらに泣きだした。
その様子は、相当に激しかったし、
気持ちを切り替えるのは相当に難しそうだったので、
「わかった。
じゃあ、お母さんを探しに行こう。」
といって、門を出た。
一緒に手をつないで早足で歩く。
泣きながら歩くKくん。
そういえば、こんなに泣くことなんて久しぶり、と思い、
「Kくん、いっつも頑張ってるもんね。
こんなに泣くことなんて、ないもの。
探しに行こう、お母さん。」
というと、ピタッと泣き止んで、
「あ、鳥がおる。
あ、ここRちゃんち。」
とお話を始めた。
そして、駐車場に着く。
私たちは、話を続けながら、
ただ、一度も止まらずにそこを適当に歩き、
まわって駐車場を出た。
そこには、「探す」という動きが全くなかった。
ただ、我々は、そこを流して歩いた。
それで私は、
あぁ、彼はいないってわかってて、
だけど、ここに来なくちゃいけなかったんだな、
と思った。
私たちは、変わらない歩みの速度で、
風を感じ、川の流れを感じながら幼稚園に向かった。
すると、幼稚園では、地震速報が誤報で鳴って、
大事件になっていた。
びっくりや。
旅のすてき。