S氏は、非常にジェントルマンな男の子である。
か細く、泣くときは声にならない嗚咽をもらす。
以前は大変な泣き虫であった。
というわけで、園としても大変な箱入り息子として育ててきた。
特に、結実子先生の箱入らせぶりは、徹底している。
そんな彼だが、ジェントルマンらしく非常にクレバーな頭脳を持っており、
将来は確実に何かで活躍するであろう煌めきを持っている。
そんな彼が、首に白いシフォンを巻き、
「僕はとてもおもしろいことをやっているよ。」
という笑顔を向けてきた。
「なんか、エリマキトカゲ?」
と私が言うと、それは全然違っていて、
彼は、白いあごひげのおじいさんになっていたのだった。
ちなみに、彼のおじいさん歴は長く、
年少のときからのベテラン俳優であるらしい。
私のあまりのトンチンカンぶりに彼は去っていったが、
先生の説明によると、
S氏扮するおじいさんは、毎日病院に検診に行っており、
Hくんら、お医者さんに見てもらうらしいのだが、
時々、道で行き倒れちゃうんだそうである。
それを多くの通行人が助けて病院に運ぶらしい。
そんなおじいさんが、ヤクルトで作った新しい杖で、
腰を90度に曲げて歩き、
(現実90度に曲げないと歩けない杖の長さで)
今日も検診に向かい、
寝転がって検診を受けていた。
そして、次の日には、あやめ組で、
浦島太郎ごっこが始まっていた。
そして、職員室では、
はやくも、生活発表会、どうなるか!
と話し始めたのであった。
おじいさんのすてき。