Hくん。寝てくれない、Hくん。
寝る前に、必ず「H、寂しくなった。」
「お父さん、お母さんに会いたい。」
「お父さんと、お母さんと赤ちゃん大丈夫かな。」
「H、お母さんに会いたい。」
という。
寝るという忘我の時間帯を前に、子どもは不安になったり、
寂しくなったりする。
というわけで、寝ない。
一日目は、私にしがみついて寝る直前まで行ったが、
ずわっと覚醒する。
抵抗せんとって!素直に寝て!と思う私。
だが、私の足を抱き枕にして寝ようとしている彼を見ると、
私を肝試しの材料に使っていた、
つまり、化け物か何かと思っていた彼が、
こんなふうに、私を安心の材料に使っていることに、
改めて、付き合いも3年か、と思ったりする。
それでもって、次の日は、おんぶ戦法に切り替えたが、
これまた、ウトウトから、首を振って覚醒する。
だから、寝ていいんですよ、そのまま。
最後には、お互いが暑くなって限界となり、
彼は、いそいそと雨の中、傘をさして虫取りに行ってしまった。
帰ってきた担当のA先生に、
「Hくんて、寝る?」と聞くと、
「寝ます。」という。
「なに。
そりゃ、ぜひ頼むわ。」
と言って、代わっていただく。
すると、A先生は、彼を横たわらせ、
頭を撫でて、肩に触りながら、
顔を近づけて何かをささやいている。
すると、Hくんは、「うん。」とうなづいて。
目をつぶって横になっているはないか。
なんと!
どんなマジックか!
というわけで、彼が順調に寝入ったあと、
A先生に、なんて言ったか聞いてみる。
すると、
「寝んでいいきね。
でも、身体は休めんといかんきね。
疲れたろ。って言いました。」
疲れたろ・・・。
このねぎらいの言葉。
彼は、イチコロだったであろう。
「うん。僕疲れたが。」
といって寝たそうである。
さびしい心に染み入る言葉。
納得。
というわけだが、H氏は、その日の帰り際に、
「H、明日も寝んきね。」
と私に宣言して、帰ったのであった。
だから、「アイミマジックに任せます」と答えた。
子どものすてき。