年長さんでも、新しい試みをした。
色の創作である。
「牛乳は、なぜ白いのか」というYくんの疑問から始まったこの取り組み。
成分と光の関係で色ができることが分かった子どもたちは、
「色」というものに、興味を持ち始めた。
森の中で、アジサイから始まって、いろんな色を見つけ、
ひまわりを栽培して、ひまわりの中にたくさんの色を見つけて表現した。
念願のゴッホ祭りができた。
自然の色は、人工の色とは違い、ぱっきりくっきりこれが「赤」とか、
これは「黄色」というものは少なく、
たおやかで、淡いグラデーションを持っていた。
子どもたちは、色に出会う過程で、さまざまな色の名前に興味をもち、
自分たちで決めた生活グループ名も、
「マジェンタ」グループとか、「アゴット」グループなど、
プロめいた名前になった。
森での活動と並行して、
園では、色づくりをひたすら楽しんだ。
絵具は透明水彩を使って、美しい色を作り出した。
その過程で、「茶色」は失敗作であり、
強い色は、「青」と「黒」であるということを学んでいた。
スポイトを手馴れた雰囲気で使う姿は、
すでに科学者のような子どもたちである。
この学びをどんなふうに、協同的学びにつなげていくのか、
ということが、午後の職員室での大きな話題であった。
キーワードは、再現すること、分類すること、
そして配列することである。
そこで、あるテーマを持ち、そのテーマに従って色を作り出し、
並べる、ということを活動の内容として取り組んだ。
結果は大変に面白いものであった。
ドラゴンをテーマに選んだグループは、
えらくきれいでファンシーな色ばかりが並んだのを見て、
「こんなのドラゴンじゃない!」と地団太を踏み、
少し濁った色でドラゴンらしい強さを表現した。
失敗と認識していた濁った茶色の結果が、ここでは、役に立ったのである。
(ちなみに、その意味での曲者はオレンジらしい。
どんなものも、あっという間に濁った色に変えてしまう力を持つ)
また、深海グループは、浅い海の光が透き通る透明度の高い美しい青と、
海の底のダークな青を見事に表現した。
そして、中間の色がないねというダメ出しに、
やる気を失くすギリギリで頑張った。
宇宙をテーマにしたグループは、
惑星の大きさを器の大きさの違いで表し、
ブラックホールなんかも作っちゃって、
見事に地球を含む銀河系を色で表現した。
どのグループも、素晴らしい研究をしてくれて、
若草幼稚園の作品展に新たな歴史を刻んでくれた。
なんと長い前置きか。
さて、この色水を保管することはできない。
そこで、おしまいも自分たちでつけることになった。
担任に聞いたところによると、
早くも「くさっ」といって、すぐさま捨てたグループは、
「いっせーのせっ」と声を合わせて捨てた。
最後の実験をしたグループも多くあった。
それぞれが、思い思いに色とのお別れをした後、
ふと、容器を見たKくんが言った。
「先生、これ洗うが?」
「うん。洗ってくれると嬉しいな。」
そこでKくんが器を洗いはじめ、
みんなも洗いはじめ、それを干し、
さらに、机に残った水滴もきれいにふきんで拭き取って、
おしまいをつけたのだった。
感動と共に考察すると以下のようなことになる。
ある出来事に対する充実感、あるいは達成感が、
「おしまい」という主体的な行動を導く。
「おしまい」は、心をきちんと落とすべきところに落とす。
自分でおしまいをつけるそのスッキリとした充実感は、責任感を生む。
「おしまい」は、「はじまり」でもある。
子どものすてき。