Rくんは、気持ちの切り替えが難しい。
したがって、その日は別の用事を済ませて幼稚園に来たので、
幼稚園に来たくなかった。
ようやく門に入るも、やっぱり嫌です、
という気持ちで、門についている鎖を外し始めた。
私は、じっとその様子を職員室前のさん板から眺める。
彼は、何度も私の方を伺いながら、外そうとしている。
そして、「まみこ、あけるよ」
と言い始めた。
私は、聞こえないふりをして、微動だにせず、彼の方を見る。
彼は、何度かそう叫び、そして、一度鎖を元に戻した。
お。
と私は思った。
開けないんだな。
それから、彼は門の前に立ち、
それからまた、鎖を外そうとし始めた。
ん。
なんとなく、「やってやるぞ。」という雰囲気も見える。
手続きは、3段階。門の裏側についている鍵を外せるかどうか。
もし、全てできて、外に出たとして、
私がここからダッシュしてどれくらいで追いつけるだろうかと、
計算する。
だが、彼は、さらに大声で、
「まみこ、あけるよ。」と叫び始めた。
ちゃんとした子やなぁ、と思う。
彼は、さらに何度もそう叫ぶ。
私は、まったく反応せずに彼を見ている。
すると彼は、聞こえないと思ったのか、
鎖を元に戻し、
私のところに歩いてきて、
「まみこ、門あけるよ。」と言った。
「開けて、どうすんの。」
「外に出る。」
「外に出て、どうすんの。」
「自転車を見に行く。」
「自転車!
何、自転車みたいのか。」
「うん。」
「じゃあ、まみこ先生が、ここに持ってきてあげるわ。」
何しろ、彼は今自転車が大好きなんである。
だが、彼はなぜかここで、外に出ることをやめて、
今ブームの鍵がほしいと言い始めた。
日頃、お家を飛び出しちゃったりして、
心配かける彼なんだけど、
本当は、ちゃんとしてるんやなぁ、
と至極感動した。
ここって時に、ちゃんと超えない。
それはダメだなって、思える。
心配だらけなんだけど、
心配ないね。
こういうのは、ご家庭の力。
お母さん、頑張ってくれてるもんね。
子どものすてき。