Gくんは、とてもお利口さんである。
だが、口と手が出る。
とうとう、園長先生に怒られる人になってしまった。
前回、「そんな口はいらん!」と怒られていたが、
今回は、「もう、動物園に行きなさい!」と言われた。
よくよく話を聞くと、戦いごっこで、親友のYくんに勝てないので、
究極の武器を使ったというわけである。
Gくんが押しても、Yくんは、びくともしない、
なのに、Gくんは、Yくんに押されると、よろけてしまう・・・。
つまり、それは、
あなたが弱いってことなんですよ。
受け止めなさい、それを。
そこで、彼に聞いてみた。
「Gくんは、好きな虫おるの?」
「テントウムシは、好き。」
「ほう。背中の星、数えたことある?」
「ううん。」
「背中に星が7つあったらナナホシテントウ。
それ以外は・・・。」
てなところで、あまり聞いてないので、
「そいじゃ、テントウムシとダンゴムシは、
大丈夫なんやな。」
「うん。」
「セミは、どうなん?」
「こわい。」
「ふうん。見たことある?」
「こわい。」
「こわいは、わかったから、
見たことあんの?」
「・・・・。」
「見たことないんか。
今度、見てこごらん。
おもしろいから。」
「こわい。」
「あなたね、こわいって言って、
見もせんで、わかろうともせんかったら、
いつまでもこわいままですよ。
そしたら、いつまでも噛むの、やめれんわ。」
さて、次の日。
防災機器の点検があって、非常ベルを鳴らすことになり、
今回は、火事ではないですから、
非常ベルが鳴っても、やり過ごして下さいね、
という放送をした。
そのとき、お知らせの「ピンポンパンポーン」を鳴らした。
それを聞いた途端、Gくんは即座に園庭に出ていた。
これは、ある意味大変、正しい行動である。
だが、園庭はシーンとしている。
自分一人。
というわけで、自分だけ間違いをしたとわかったGくんは、
「心が強くならんといかん。」
とつぶやいて、保育室に戻っていったそうである。
3歳やけど、すごいなぁ。
そして次の日、Gくんは、セミについて観察をしていた。
お、見ているじゃないか。
そしてまた次の日、Gくんは、セミを持っていた。
だがそれは、死骸であった。
子どものすてき。