卒園式という大きな舞台が、
大きなハードルとなった男の子の話である。
彼は、練習の時、必ずと言っていいほど、
どこかに行ってしまった。
それで、一度彼を抱きとめてお話したとき、
彼の心臓の鼓動が、飛び出んばかりにドキドキしているのを、
私の手の平が感じた。
こんなに。
時には笑いながら逃げていく彼の本当の心が、
ここにあるとわかったとき、
私は泣きそうになった。
そして、ある時、彼は入口で拒みながら、
「つらい。」
と言った。
あぁ、本当に、そうなんだろうな。
と思った。
彼は、証書はもらう必要があると考えていたようであり、
その時に夢を語ることも、流れでやるべきなんだろうな、
と思っており、その一連の事柄を覚えるのは、
驚くほど早かった。
しかし、思い出を語るところは、
どうにも、ハードルが高く感じているようだった。
しかし、一度はやってみる必要がある。
周りの子は、彼に合わせ、彼を待ち、万全の準備を整えた。
そして、一度だけ、彼はセリフを「うんこ」に代えて、
言うことができた。
そして、本番。
彼は、なかなかその場にいることができなかった。
思い出を語るために、彼のグループが並ぶ。
まさに、壇上に上がらんとするとき、
彼は、戻ってきた。
そして、多少邪魔もしたが、
流れを守って、すっと自分の発表をしたのだった。
私は、こんなところに、彼の強さと誠実さを見る。
たった6年間生きてきたなかにも、
山あり谷あり、
その存在にかかる究極の場面があり、
究極の選択を迫られるときがある。
そんなとき、我々も、彼も、ただ未来へと投げ出される。
事は、どう動くか、その時にならないと分からない。
そして彼は、ちゃんと自分の力で通過してくれた。
ご卒園おめでとう。
子どものすてき。