4月。
新学期スタート。
Yちゃんが、幼稚園に入りたての弟を連れて、門を出て行った。
その瞬間を見つけたT先生が、
ふんぎゃぁ!と言って、引き留めた。
そして、周りも騒然となり、慌てて園長に報告に来る。
そして、Yちゃんは、こんこんといろんな先生に、
それが、どれだけ危ないことが諭され、
シクシクと泣く。
だが、私の心は、どこか温かかった。
もちろん、大事である。
対策を考えなければならない。
だが、毎年、4月になると恒例で思うことだが、
「門」というのは、中と外を区切るものである。
子どもは、ここから出る自由を持たない。
Yちゃんは、物静かな子である。
そして、頑固である。
そして、自分のしていることに、
すばらしい集中力を発揮する子である。
お母さんは、いろんな経験をYちゃんにプレゼントしている。
年少のYちゃんがほぼ一人で作ったスポンジケーキは、
すばらしい出来であった。
しっかりもののYちゃんは、
この日、弟を連れて、冒険したのだった。
ちなみに、おやつのとき、
弟を連れて、お家に帰るの、と言っていたらしく、
本当に実行したんですね、と聞いた先生が笑みを浮かべた。
そこ、気をつけるポイントだったか、というふうに。
私は、3歳の頃から、一人でおつかいに行かされていた。
そのお店に向かう道順は、3つほどあって、
毎回、どの道で行こうかと、わくわくした。
それで、無駄にへんてこりんな道を選らんで、
行ってみたりしていた。
Yちゃんにとっては、
きっと、すごく自然なことだったのではなかろうか。
私は、お姉ちゃん。
私が、弟を連れて、お家に帰るんだ。
まるで、絵本のような出来事である。
次の日、お母さんがお詫びに来てくれたが、
もちろん、謝罪すべきはこちらであり、
深くお詫びした。
実は、家でも抜けだし事件があったらしいが、
そんなときは、是非、後ろを付いて行ってみて欲しい、
なんて、言ってみた。
今の時代、子どもの自然な冒険心を満たすことが、
なかなかできない。
外は、危険に溢れている。
不審者、車・・・。
それらを前にして、子どもはあまりに無力である。
そして、我々には、子どもの安全を守る責務がある。
だが、子どもには、こんなすばらしい冒険心があるのだ。
Yちゃんは、それを教えてくれた。
ごめんね、Yちゃん。
私たち保育者は、あなたの冒険心を満たしてあげられない。
けれど、なんか、考えるね。
子どものすてき。