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子どものすてき
きらりと光る子どもたちの姿をみなさんにお届けします。
2021年5月10日
絵を描くこと ・・・卒園児

 

「絵を描くこと」の幸せを、私に教えてくれた子がいる。

それは、その子が年少さんだった時のことである。

彼は、白い画用紙に、クレヨンで絵を描いていた。

しっかりとした線が、彼の言葉と共に、どんどんと紡がれていった。

それは、本当に自由で、楽しそうだった。

そして、その画用紙は、真っ黒になった。

鮮烈で、きらきらとした色合いが、

彼のお話と共に、どす黒く、意味わからんようになったことが、

私には、とても大きな感動だった。

 

エネルギーを出し切るとは、こういうことではあるまいか?

 

そして、彼が年長さんになって、卒園式に貼る自画像を描いたとき、

彼は、「いっぱい、色を使う!」と張り切っていた。

私は、その張り切り具合を聞いて、とても楽しみしていた。

そして、案の定、彼の絵は、変な色になっていた。

混ぜ過ぎちゃったわけである。

私は、年少の頃の彼の絵を思い出して、

変わってなくておもしろかった。

そして、いつ、塩梅を見つけて変わるんだろう、

と楽しみだった。

 

彼が小学校に入ったとき、

なんでも、授業で絵を描くのが嫌だと言っている、

といううわさを聞き、「順調だな」と思った。

彼の自由なほとばしりからしたら、

そりゃ、もちろん嫌であろう。

 

そんな彼が、小学6年生になる前の春、

タイムカプセルのイベントですくすくの森にやってきた。

遅刻ギリギリで、寝癖があった。

なんか、変わらんなぁと思い、

「絵、描いてるか。」

と尋ねた。

 

すると、「描いてる。すごく描いてる。ずっと描いてる。」と言い、

「(勉強の)ノートとかに、100以上。」と言った。

 

詳しくは忘れたが、

そこには、描いてはいけないところに、

とにかくひっきりなしに描いちゃってる自分、

という、どことなく否定的なニュアンスがあった。

 

私は、なんか、すごく年少さんの頃のエネルギーが、

彼なりの葛藤の中で、ちゃんと息づいていることが嬉しくなり、

「それでええ、それでええ。」と言った。

そして、小学校の絵の時間に絵を描くのが嫌だというのは、

大変正しい、という話をした。

絵は、心赴くままに描くものであり、

決められて描くものじゃない、

君は才能あふれる人なんだ、と励ました。

 

すると、彼の顔がくっと引き締まり、

今、自分が何を描くのが難しいか、

という話をし始めた。

それは、エヴァンゲリオンの身体であった。

顔は、かくかくなので、むしろ描きやすいらしい。

 

私は深く共感した。

エヴァの身体は美しい。

それで好きになって、映画に行ったことがあるが、

残念なことに、それが私にとってトラウマの経験となり、

二度と行くか、と心に誓うものであった。

 

もとい、彼の、その自分が描くものへの、

魂を込めているからこそ生まれているこだわりとプライドに、

頼もしさを感じた。

 

私に、絵を描く幸せとはどんなことなのか教えてくれた彼が、

これから、どんなふうに絵と共に生きるか、

本当に楽しみである。

 

卒園児のすてき。

 

 

 

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