そして、本番。
Tくんは、実に前向きであった。
一度は「できん」と逃げた体操係も、全身を使って、
彼にとっての最高のパフォーマンスをしてみせた。
そこには、彼の真剣な真心があった。
そして、組み立てのチョウチョの時、
彼は、自分の代わりに真ん中になってくれたMくんに、
「おれが、楽にしちゃおき。」
と、3回言った。
チョウチョで真ん中だったとき、自分が辛かった経験、
それをMくんが代わってくれたこと、
そのMくんだって、実は辛いのだとわかったこと、
だから、自分が頑張って、Mくんに体重をかけないように、
自分で自分を支える、
と彼は言ったのだった。
これを聞いて、私の心は感動に溢れた。
あ~やって、抵抗しながら、
いろんなことを感じていたんだな、と思った。
そして、3人ピラミッドのときには、
「ここ、しっかり。」と隣でMくんにハッパをかけていた。
そうして、Tくんは、技そのものの成功に向かって集中し、
Mくんも、しっかりとみんなを支え、
Nちゃんも頑張り、6人ピラミッドは、見事に成功した。
こうしてTくんは、今日この日、
自分の「できない」気持ちに、正面から向き合い、
まっすぐに、全てを乗り越えていったのだった。
運動会には、いろんなドラマがある。
ちなみに、今日、私の脳裏に焼き付いているのは、
リレーのMくんの姿だった。
彼は、決して足は速くない。
それに、フォームもそれほどいい訳ではない。
だが、「全力200%」の、
バトン受け取りダッシュを見せてくれた。
どんなに、フォームがイマイチでも、
私の頭に、かけがえのない瞬間として、強烈に残った。
それで、みんなにこの話をすると、
どの先生もそんなふうに思っていたらしく、
「そうそう!すごく足の回転が速かった。」と感動していた。
運動会って、いいよね。
子どものすてき。