ある子は、証書をもらうということに必然性を感じず、
むしろ、壇上に立つなんてとんでもないし、
何か分からん紙を受け取って、お礼言うなんて、
意味わからないんですけど、という気持ちになった。
そこで、本物の彼の証書を見せ、読んで聞かせる。
「これがあって初めて、君は、若草幼稚園を出た子ということになるんだから、
受け取ることがとても大事なんだ」という話をする。
この理屈は、彼の心に入ったようだ。
みんなの前でなんて、恥ずかしくてたまらないのに、
彼は、ちゃんと証書を受け取って、絞り出すような声で、
「ありがとうございます。」と言うことができた。
一生忘れん。
えらいなぁ。
決めたことは、ちゃんとやり抜く勇気をもった子である。
さて、その次の日。
ちょっとしたトラブルがあった。
えらく怒ったようだ。だが、そのやり方はいけない。
そこで、彼を職員室に呼んだ。
すると、どうも聞いていた話とはズレが合った。
された方の言い分では、彼が少し理不尽に怒り出した風であったが、
むしろ、そうではなかった。
そのことを彼は、ちゃんと私に説明したのだった。
それで私は、「あぁ、そりゃ腹が立つわ。」と納得した。
今までであったら、貝のように、口を閉じたままだったろう。
成長したね。
自分を開くことは難しいけれど、
開いた先に、開けてくる道がある。
ご卒園、おめでとう。
子どものすてき。