9月のある日。
どろだんごをぎゅーぎゅーと丸め続けてからサラ粉をかけた方が、
固いものができると発見し、
今日は雨だし、ということで年長のテラスで泥団子づくりをはじめる。
すると、自然にサラ粉をくれる人がいて、どろだんごを作りを始める人が増えて、
ちょっとしたにぎわいのなかで、楽しむ。
東京産黒土だんごを作り始める人もいて、こちらはあっという間に、光り始めている。
と、北海盆唄の曲が聞こえてきて、思わずばら組に行って、踊り始める。
一緒に踊っていたRちゃんが、私が片手にどろだんごを持っているのを見て、
「落とすで、踊りよったら。」と言う。
しかしながら、ワタクシ、「大丈夫よ~」なんてノリで踊り続けていると、
ぎゃー。おとしちまった!
真っ二つならぬ、4つ割れ。
まわりの子たちが、息をのんで、見てくれる。
「ほら~、言うたやんか~!
持っちょったら、落とすでって~!]
と、Rちゃん。
そのとおり。
そのとおりです。
かなりの時間をかけていたので、心から残念に思う私。
でも、「作り直すき。」とかけらを集めて、水を入れて、
サラ粉を足して、練る。
すると、「わたし、サラ粉いっぱい作りよる。」とYちゃん。
なんて、やさしい。
その他、私が水とサラ粉の塩梅を図っていると、「もっといる?」
「どうするが?」となんだか、思いやりにあふれている雰囲気に、
子どもってなんてやさしいのかしらと感動する。
出来事を共有する中で、思いを共有する関係。
そこから自然に出てくる、相手を想う心。
ありがとう。
そうして、前よりも大きい泥団子ができはじめる。
うししし。
ところが、一人立って園庭を見ながら、考え事をしていて、
するりとまた落としてしまった!!
ぎゃー。
あほか、私は。
焦って、落ちた泥団子を拾い上げて見ると、ん?
割れてない。
へこんで、一部剥げて、ヒビが入っているだけ。
なんと!
これはすごい。
つまり、前より、固くなってるのよね。
思わず、運動会の練習のためにホールへ向かうさっきの仲間に、
「見て!まみこせんせい、また落としてしもうてよ、
けんど、割れてない!割れてないで!」
と見せてまわる。
「ほー、」とか、「また~、」「なにしゆうが~、」
「けんどほんまや。」
と見る子どもたち。
そして、一人上に行って集中し始める私。
さっきの子どもたちに、
なんとしてもぴかりと美しい泥団子を見せたいと思う。
問題は、まんまるくなるかどうかだが、
へこんでいるところにサラ粉ドロを足して、
表面を水で撫でているうちに、出来始めた。
よし、成形完了。
後は、磨くだけ。
そうして、見るからに密度濃そう!という光るどろだんごができあがった。
彼らがホールから出てくるところを見計らって、
「見て!できた!なおった、ほら!」
「おぉ~、」という子どもの顔。うれしいな~、うひひ。
「触らせて~、」と集まる顔、顔、顔。
うれしいな~。
そんな中、この泥団子の経緯を心で知ってくれているYちゃんが、
「すごい、すごい、これ、まみこ先生がひとりでやったが?
すごい。サラ粉は?まみこ先生がつくって?」と本当の意味で感動してくれる。
「ううん、Yちゃんの使わせてもらった。」
「すごい、すごい、」とYちゃん。
嬉しい。
実は、わたし、ずっとあなたの顔をイメージしてた。
とてもとてもナイーヴなYちゃん。
ときに、私をからかったり、ぞんざい風にするけど、
その心はとても繊細で傷つきやすい。
そんなあなたに、なんど壊れてもやり直せること、
そして前よりも、もっと美しくできることを見せたかった。
それにしても、なんか違う、ということが子どもたちにはすぐにわかるらしく、
運動会のスターター・ゴールテープ係の練習で集まった子どもたちが
私の所に来てまっさきに言ったことは、
「どろだんご見せて。」だった。
ふははは。
粘ってよかった。