彼女はいけないことをしたので、怒られることになった。
それは、なかなかにいけないことであった。
Y先生がHちゃんを連れてくる。
「もう、三回目。」
「何をしゆう!」と私の声が荒ぶる。
そして、抵抗むなしく、職員室に連れていかれる。
大泣きをするHちゃん。
ちなみにHちゃんの泣き方は「渾身」という言葉がぴったりで、
全園に響き渡るほどである。
だが、負けるか。
「まみこ先生は、全然困らん。」と相手にしない。
誰かが、入ってくると、懇願の視線を向けるHちゃん。
「いかんいかん、他の先生見ても、
誰も助けん。」といい、むしろ、
「ね~、聞いて、Hちゃん、○〇したのよ、
それも三回も!」
「あ~、それはだめだね、Hちゃん。」
「ほ~ら。」
また、大泣きする。
これを2回繰り返すと、今度は「ごめんね~。」と泣き出す。
「ごめんね、なの?
何がごめんね?
Hちゃん、何したの?」
だが、それには答えず、「ごめんね。」を連呼する。
「いかんいかん。ただ、早く終わってほしいだけやろ。」
と返す。
生きる力みなぎって泣く。
負けてたまるか。
登園の時間帯ですけれども、きっと響き渡っているでしょうけれども、
あなたのために、負けるわけにはいかん。
「ごめんね、はわかった。何をごめんねって言ってるの?
Hちゃん、何をした?」
「ごめんね~。」
「はい、だめです~。」
ちゃんと、お話しできんやったら、終わらん。」
そのうち、「お話しできる~。」と泣き出す。
「何、お話しできる?
ほんなら、泣くのやめなさい。」
すると、ピタッと泣き止む。
ほ~ら、その大泣きも意図的であるわけだ。
こちとら、何年保育者よ。
「Hちゃん、何した?」
だまる。
罪は、認めたくないらしい。
そこで、Hちゃんがやったことと同じことをしようとする。
すると、大変素早く「嫌だ」と後ずさる。
「何、そんなに嫌なん?
そんなに嫌なこと、お友達に3回もやったわけ?
まみこ先生もやってあげるよ、ほら。」
「うわーん!」
「そんなに嫌やったら、やったらいかんかったね。
「はい、Hちゃんは、何をしたの?」
だまる。
もしかしたら、言い方がわからんのかもしれんな、とも思い。
「〇〇は、やったらいかんね。」
と言うと、「うん」とうなづく。
「〇〇は、もうしませんって言って。」
というわけで、彼女は泣きながら罪を認めた。
「そいじゃ、謝りに行こうか。」と言って、
彼女をおんぶし、謝りに行った。
私は、次の日に興味があった。
どんな心持ちで、登園してくるかなと思った。
もちろん、私は変わらず笑顔で迎える。
最初、彼女は「まみこ先生」と言った。
いつもは、「まみこ~。」なのに、「まみこ先生」である。
一緒にお花のお世話をしながら、「まみこ先生」は4回ほど続いたので、
どう考えても意識的だった。
そこから、いつの間にか「まみこ」に変わった、
その次は、「くそばばあ」だった。
そして、最後は「じじい」だった。
Hちゃんのすてき。