前置きが長すぎたが、ここからが本題である。
プールの時間のことである。
彼が、Kくんに何か必死で話しかけている。
Kくんは、うん、うん、とうなづいている。
そして、おもむろに、N氏は持っていた水ボールの水を、
Kくんの顔にぶっかけた。
Kくんは、ぼえっとなる。
顔面直撃である。
間近で保育者が見たら、即止める場面であろう。
だが私は、かなり離れた所から見ており、
Nくんの必死さとKくんのうなづきを見ていたので、様子を見た。
Kくんは、顔をぬぐう。
それから、またN氏は必至で何かをはなしかけ、
Kくんは、うなづき、また、どぷんとかける。
Kくんが、直撃の水をぬぐう。
それが3回繰り返され、Kくんは後ろを向いて、
手で止めてと伝えた。
すると、Nくんはすぐに止めた。
なんとなく、これってトレーニングだろうなと思った。
そして、損な男だのう、と思った。
きっと、まわりはびっくりして、意地悪だと思って、
なんでそんなことする、という雰囲気で包むだろう。
もし、N氏のアイデンティティが育ってなかったら、
言ってもわかってもらえないと、口をつぐんだだろう。
それにしても、この心のかけかたはなんだろうか。
その後、Kくんが遊んでいたボートのおもちゃを、
別の子がうばったのを見て、烈火のごとく怒り、
取り返していた。
この場面を見て、やはりあの顔面ぶっかけ事件は、
彼のトレーニングだったのだろうと思った、
いろんなところでハンデを持つKくんに対するこの思いやりは、
いったいどこから来たのだろう。
いろんなことを自分なりに乗り越えてきたNくんの、
Nくんなりの気持ちだろう。
だが若干、いや求めてないです、的なかかわりであったりして、
また別の日に見たときにも、相変わらず顔面にかけていたが、
即、手の平でKくんに拒否されており、すぐに止めていた。
これから、思春期に向けて、「相手にとってどうか」、
「相手は何を求めているのか」、「そこで何を目指すのか」ということを、
学んでいくのだろう。
私は、彼の思いやりが本当に嬉しかった。
そして、これから先、頼むから損しないでくれと心から願った。
どうか、このまままっすぐに、
いろんな大人に慈しまれて育ちますように。
子どものすてき