Hちゃんが、半泣きの表情をしていることに気づき、
「どうした?」と聞くと、「うわ~ん!」と泣き始める。
「なになに!どうした!どうしたの、Hちゃん。」
こんなに泣くなんて、何があった!?
若草幼稚園、ザ・思いやりのあなたが泣くと、よけい心配。
以前、私が一人でトロ舟を洗っていると、
後ろからすっと私の肩に手を置いて、
「一人で、寂しいが?」なんて、声をかけてくれた人である。
泣きながら、説明をしてくれるHちゃん。
「うぇっ、うぇっ、でっ、うえっ、ひっく、うぇっ・・・。」
うーむ、分かりたいが、分からん。
した方のHちゃんが来て、「ごめんね~。」という。
ほほう。
何か、言ったな。
さらに、された方のHちゃんは、
「ひっく、ひっく、ら・・・、うぇっ、うぇつ、ひっく、も、
ろっ、ひっく。」
と泣きながら、必死で話そうとする。
分かりたいよ!という気持ちで、必死で聞き取ろうとするが、
分からん。
「うーん!分からん!
落ち着いてからにしよう。」と言って、
ちょうど、他の子を森へ行くために外へ促して、Nくんの世話をする。
Hちゃんも、そう思ったらしく、とりあえず泣く。
他の子は、部屋からいなくなったが、
した方のHちゃんは、ちゃんと逃げることなく、
泣いているHちゃんのそばにいる。
私は、彼女のこういうところが大好きだ。
口は悪いが、真心がある。
少しHちゃんが、落ち着く。
「もう大丈夫やろ。どうしたん?」
と尋ねると、すらすらと淀みなくしゃべるHちゃん。
自分でも、しゃべれんなぁ、と思っていたのだろう。
結局、Hちゃんが人のロッカーからはみだしている何かを見つけて、
勝手に開けて触っていたので、
「触っちゃだめ。」と注意をして、
それで、Hちゃんに捨て台詞を吐かれたというわけだった。
「ばばあ」とかなんとか言ったのだろう。
別の場面でも、Hちゃんに向かって「くそばはぁ」と言っていて、
「くそばばぁじゃない」と普通に返していたのを見ていたので、
なるほどね、と思った次第だった。
それで、こんなに泣くHちゃんを見て、
したHちゃんは、申し訳ないと思ったらしかった。
それにしても、分かりすぎる事件である。
Hちゃんは、非常に淑女なところがあるので、
人の物を勝手に触ろうとすることを静かにたしなめただろう。
そして、もう一人のHちゃんは、非常に目端が鋭く、好奇心が旺盛である。
だから、なんだろうと思って、確かめようとしたのだろう。
注意されて、むかっ腹を立てて悪口を投げるHちゃんに、
傷つくHちゃん。
二人の「らしさ」が引き起こした事件は、
結末も「らしさ」が光った。
そばで、Hちゃんの泣く様子を、
ずっと困ったように見ていたHちゃんに、
「Hちゃん、こんなに泣いているから、もう一回謝っとこうか。」
と言うと、
素直に、「ごめんね。」というHちゃんだった。
こうやって、一見合わない人とかかわりあって、心をうごかして、
互いの良さが引き立つようになるんじゃないかしら。
子どものすてき。