3歳の頃の彼は、反応が薄くて、物静かだった。
集中力は抜群で、世界のさまざまなことに不思議を感じ、
力強い試行錯誤を重ねていた。
そんな彼も、いつしか友だちに関心が向くようになった。
だが、友だちは返ってくる反応が予測不能な上に、
自分が紡いできた世界のように、意図的に作り上げることが不可能だった。
そんなわけで、動きが実にちぐはぐになった。
そして、みんなでうたう歌もちぐはぐで、
飛び出たり、消えたりをひっきりなしにしていた。
彼は、運動会で放送係を担当しているが、
最初は、実にスムーズで、すぐに全てを覚えていたが、
そのうち、笑いこけたり、ふざけたり、上がったり下がったりして、
ちぐはぐになった。
そしてある日、ものすごくトーンダウンしてぼそぼそと話すようになった。
本番をイメージしたか?
案の定、「失敗したらどうしよう」と不安の声を出したらしかった。
「そんなもん、助けるから考えんでいい。
とにかく、やりなさい。」とはっぱをかける。
そして次の日、改めて間違えても大丈夫であること、
忘れても助けることを何気に伝える。
彼は、はぐらかしていたが、嬉しそうだった。
その30分後だろうか?
彼が、すっと私の手を握って、
アイスクリームの歌をうたいだした。
年長さんが、お誕生会でうたった歌である。
それは、小さな声だったが、滑らかだった。
思わず、合わせて歌いだす。
私たちは、適当に歩きながら、調子を合わせて歌った。
いつもの唐突に上げ下げする歌のちぐはぐさは、
すっかり鳴りを潜めており、私たちの声は、調和していた。
そして、クライマックスへと自然に盛り上がり、
「やったー。」というポーズと共に終わった。
日頃の「ザ・ちぐはぐ」の中身はなんだろうか。
きっと、恥ずかしさやどうしていいか分からん心があるのだろう。
その奥底には、ちゃんとやりたい思いがある。
それを感じ取った私は、なんとしても成功させてやりたい、
そう思ったのだった。
そして本番。
彼は、ちぐはぐ率0.01パーセントのすばらしい出来栄えで、
役目を無事全うした。
次の日、身長まで伸びて(背筋が伸びたのかしらん)、
実にすばらしい晴れ晴れとした笑顔で登園してきた。
そのすっきり感は、持続中だ。
運動会といううねりの中を生き、
そこで目的と課題に直面し、追い込まれ、それを乗り越えて成長する。
子どもってすてき