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日々わくわく
子どものすてき
きらりと光る子どもたちの姿をみなさんにお届けします。
2014年6月30日
物語 Ⅲ

 

そして、次の年、

彼は天真爛漫な男の子に、手に入らないものへの憧れを持ち、

関わるようになりました。

それは、相手にとって、喜びではありませんでした。

 

先生が彼を呼んで、「淋しいのね。」と言って泣きました。

 

彼は、びっくりしました。

ぼくのために、泣いてるの?

 

彼は、これをどう受け止めていいのか、わかりませんでした。

だから、いつも変わらない先生のところに行って、

僕を大事にしているのはあなただけだ、と言いました。

「そう?

 今のせんせいは?」

「あなたと今のせんせいだけ。」

「それはちがうね。

 年少のときのせんせいは?

 あなたと毎日○○をやったでしょう。」

「うん、でも、もういない。」

「いなくても、あなたのことは大切なの。」

「それから、次のせんせいは?

 あのせんせいもあなたのことがとても大事よ。」

「うん・・・。」

 

そのときの先生の涙で、彼の心に大輪の花のつぼみができました。

今、つぼみは、とまどいのなかにいます。

ぼくは、この世界の住人になっていいのだろうか。

一度、壁にあてて屈折させる世界ではなく、

まっすぐな世界へ、ぼくは行けるのだろうか。

 

彼は、先生のそばにいて、

「あなたが僕の拠り所」という態度をそのまま表すようになり、

泣き虫になり、わがままになり、おこりんぼになり、

大っぴらないじわるになり、

和らかな笑顔を浮かべる子になりました。

黒いものが、水色になりました。

 

靴箱の隅が、いじけたときの定位置となり、

隣のクラスの先生と目を合わせ、

「せんせいに知らせて」という目をするようになりました。

 

せんせいたちは、それを嬉しそうに話しました。

 

ねぇ、Rくん。

みんながあなたを守っているの。

わたしたちは、あなたの想うように動けないし、

あなたの想うような愛は与えられない。

代わりに、多くの愛と、

薄いけれど広くて、次の扉を開けられる愛をささげられる。

 

こっちに来てね。

怖くないから。

 

その大輪の花を咲かせましょう。

 

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