園長ブログ

子どもと咲く花

保育の醍醐味は、なんといっても先生のものです。

毎日がとても新しくて、きらきらしています。その点、園長といえばお花の世話をするか、えらそうにするか…。

けれど、決まったことがない分、ゆったりとここにいて、あの子、この子に出会えます。

あいまいな存在であるからこそ出会えるあの子のすてき、この子のすてき。

きらりと光る子どもたちの姿を心に留めておきたくて、こうしてコラムを書いてみることにしました。

子どものすてきが、どうか、みなさんに届きますように。

2015.06.11

芸術的やね ・・・年中児

 

年中さんで、「たけのこ」を描いた。

毎回見るたびに大きくなる「たけのこ」。

食べておいしかった「たけのこ」。

この日は、色塗りだった。

 

「たけのこ」の中に見つけた色を、自分で創って塗る。

赤があった?ピンクも?黄色も緑も茶色もあるね。

紫もあったかも。

自分なりに見つけた色を先生に出してもらって、

それをお盆の上で、混ぜながら創って塗る。

 

と、Hくん。ありゃりゃ。

いっぺんに全部混ぜて、ある色ができた。

うーむ。なんですかね、ピンク茶色みたいな色。

しかし、まぁ、よかろう。

やり直しはするけど、とりあえず、その色を塗ってみよう。

 

私は、となりのNちゃんのそばにいる。

 

Hくんから、「まみこ先生、僕も手伝って。」という声が。

いいともいいとも。

Nちゃんが没頭し始めたところで、

今度はHくんと二人で色塗りが始まった。

 

案上、出した色を速効いっしょくたに混ぜ始める。

 

「ぐわ~、いかんいかん、そんなに混ぜなや。

 見より、見より。」

 と彼の目の前で、色を創る。

 

「どう?こんな色。これどう?」

と尋ねると、「いい。」というが、微妙に見てない。

 

しかしHくんは、たけのこを塗り始めた。

そして、塗る度に彼はこう言った。

 

「芸術的やね~。」

 

「うん、芸術的や。」

と、私は応える。

 

しかしながら、

「ぐわ~、いかんいかん。

 そんなに混ぜなや。」

 

「芸術的やね~。」

「うん、芸術的や。」

 

「ちがうて、これ見よって、ほら、

 ここと、ここ、色ちがうろ。」

 

「芸術的やね~。」

「うん、芸術的や。」

 

「見ゆう?見ないかん、見な。」

 

「芸術的や。」

「うん、すばらしい。」

 

「やっぱり、筆洗ったらどうやろうね。

 塗りたい色で、塗れないじゃん。」

 はい、ここもね。ここも、ここもよ。

 ここは?どんな色にする?

 はい、がんばろう。あとちょっと。

 

てなわけで、およそ40分ほど、彼にしてみれば、

最高時間であろう、時間、私と攻防を続けた。

その間、彼は30回ほど、塗る度に「芸術的やね~。」を繰り返した。

私はそのたびに、「うん、芸術的や。」と返しながら、

ギャーギャー言い続けた。

そうして彼は、おぼんの中で創られる色を見分けられるようになり、

筆の持ち方がグーから鉛筆持ちに変わり、

殴り塗りが、丁寧塗りに変わり、

塗りたい色を塗るために、筆を洗うということを知り、

自分で色を確認しながら、混ぜて、色を創るようになった。

そうして、彼の「たけのこ」は、大事な、彼だけの「たけのこ」になった。

後半は、「実に色を塗ってますよ、僕は、」という感じになった。

そして、最後は2人で抱き合って、出来た絵を眺めた。

 

「芸術的やね。」のなかには、彼独特の素直さや、愛らしさやおもしろさがあるが、

ずっと答えているうちに、そこに不安があることが分かった。

彼だって、分かっているのだ。

みんなと違う。

だから、私を呼んだ。

「違う」はわかっても、何が違うかわからない、

どうすればいいかわからない、

そんなときは、ぐっと、先生がひっぱるよ。

 

丁寧はたいへん。

だけど、よくがんばった。

 

Hくんのすてき。