大きな二股の木があって、
そこに、インディアンの少年がどっかりと座っていました。
その少年は、化石になろうかというくらい長い間、ピクリとも動かず、
ずっと一心に何かを見つめていました。
それはどうも、鋭い枝と重い石のようでした。
しばらくすると、雷が鳴り響き、あたりが暗くなりました。
雨がザーザーと降りしきり、
少年はびしょ濡れになりました。
それでも、少年は動かずに、その木に座ったまま、
枝と石を見つめていました。
そこへ、ねずみがやってきました。
ねずみは、少年にこういいました。
「もう、時間だよ。」
すると少年は、枝を手に取り、大きな幹に登りはじめました。
登るにつれて、もう一本の幹が消えていき、
二股の木は、一本のまっすぐな木に変わりました。
月が上り、星が降り、木はますます大きくなりました。
どこからかフクロウがやってきて、
「ホー、ホー、」
と静かに鳴きました。
少年は、てっぺんまで上ると、月に向かって、
何かを唱えました。
そして、太陽が出てからも、同じ言葉を唱えました。
太陽が、そのままあたりを明るく照らし始めると、
少年は、下に戻り、その鋭い枝を木に突き刺しました。
木は、少しだけ悲鳴をあげ、そこに洞をつくりました。
少年は、その洞をじっと見つめました。
足元には、レンゲショウマが咲いていました。
少年は、その洞に住むことにし、生涯をその木と共にしたのでした。
ちょっとしたお話。