高知の男は、やればできるといってやらんのが定番であるが、
それはおいておこう。
これは、年中のYくんの話である。
Yくんは、一番であることを求めていたが、
どうも、一番になれそうになかったので、
走りたがらなかった。
走ってみても、
一番になれないとわかると、すぐに足が止まって泣いた。
しかし、今一番になれなくても、大きくなったら、
きっと、一番になれる、そのためには、頑張らないとね、
と励ます。
お家の方も、一緒に走ってくれたりして、
「最後まで走ろうね」って、温かく見守ってくれる。
そうして、彼は、ある日本気で走った!
おぉ!!
そして、2番だった。
これには、びっくりしたが、
本人は一番がよかったので、ゴール間近で座り込んで泣いた。
本気を出して、挫折。
つらいね。
それでも、一つの希望をもって、
彼は次回に臨み、一番でスタートを切るも、
すぐに2番と分かり、座り込んで泣いた。
挫折が確かなものになってしまった。
Yくん、今年は2番だね。
でも、来年はわかんないよ。
年長さんになったら、わかんないよ。
頑張ってるじゃん、頑張ってるよ、Yくん。
その日の午後、
先生とYくんが、数名の友だちと一緒に、園庭に下りてきた。
そして、先生とYくんが、何度も何度も走る。
友だちがゴールテープを持って、
Yくんは、何度もゴールテープを切った。
最高に嬉しそうな笑顔。
それから、友だちが走り始め、Yくんがゴールテープをし、
そうして、とうとう、Yくんは、その友だちたちとスタートラインに立った。
おぉ!
Yくん!
私の心が「頑張れ!」と叫ぶ。
スタートして、2番、
でもY君は走ることをやめない。
負けるからショートカットした。
まぁ、よかろう。
それでも、2番。
でも、走ることをやめない。
そして、とうとう、3番になってしまった。
でも、最後まで、走った。
顔には笑顔が浮かんでいる。
先生は、最高に嬉しそうに、彼を抱きしめた。
先生はみんなの先生だが、
ときどき、あなただけの先生になる必要がある。
あなただけの先生は、子どもの心に翼をつける。
Yくん、すごいね。
Yくんのすてき、先生のしあわせ。
子どものすてき。