2歳から入園したKくん。
最初はわからなかった。
おだやかな子だなと思っていたが、
専門家は、一目見て、彼の激しい部分を見て取った。
その激しさは、年中でマックスとなり、
エンチョウセンセイとも「対決」という言葉がふさわしい出来事がいくつかあった。
今思えば、われわれは、もっと何かできた。
ごめん。
Kくん。
年長になって、彼は、次第にこの世界に生きる、ということを自分で調整し始めた。
お泊り保育では、一週間前からお家で不安を言葉に出すようになった。
それを聞いて、大丈夫だなと思った。
到達点を予測して、構える姿勢。
当日は、見事引き締まった表情で登園し、安定した情緒でお泊り保育を乗り越えた。
運動会のたいこの役では、練習を自分なりのペースで配分して、
そもそもの才能も生かして、見事やり遂げた。
みんなと一緒の練習を途中でやめても、
本人のなかの本番設定とカリキュラムをなんとなく信じられた。
いつも、彼は、「本番」になると、「本番」スイッチが入っていたからだ。
そのたびに、わかってんだね、と思った。
すくすくファミリーコンサートに向かう道のりは、実に順調だった。
本人もとてもやる気で、臨んでいた。
ところが、当日の舞台裏が暗かった。
それが、彼には耐えられなかった。
ただでさえあった不安が、大きく、大きく膨れ上がった。
本番直前、うずくまって「出ない」と震える彼を見て、
本気の恐怖を感じ取った。
「自分で決めていい。でも、あなたがいないとみんなじゃない。
ここで、聞いてて。」
まさか、こんなことがあるなんて、と驚いた。
そして。
みんなの歌が聞こえてきた瞬間、
彼は立ち上がり、走って舞台の上に立った。
そこが、自分の生きる場所とでもいうように。
お誕生会の司会は完璧で、状況判断して言葉を発する場面もあり、
心底驚いた。
いろいろあったね、Kくん。
感性が豊かであり、豊かであるがゆえに過敏であり、
この世界で、耐えることを宿命として生きるKくん。
自分を持て余し、まわりと折り合いをつけ、
前に進み続けるKくん。
たくましくて、ハートフルなKくん。
ずっとずっと、応援しています。
小学校でも、がんばってね。