彼と一緒に空を見た。
彼と私は、今、とても抜き差しならない緊張関係にある。
まず、彼の朝の挨拶は、「園長まみこ、バカクソウンコ」である。
そういうわけで、結構なバトルが続いている。
顔面に蹴りをくらったときは、結構本気で痛かった。
というのも、私が時に彼を羽交い絞めにするからであり、
彼は圧倒的な大人の力に屈辱を感じ、向かって来る。
しかし、大人は大人なのである。
先日は、森で持っていた棒をもぎりとって、ぶん投げてやった。
自分でも会心のぶん投げだった。
私は、彼と二人だけの時間を大事にしている。
静かな、落ち着いた時間を、お互いに落ち着いて過ごすこと。
そうは、取れない。
あるときでも、7分くらいである。
この日は、私に追いかけてほしくてちょっかいを出してきたので、
一緒に職員室に忘れ物を取りに行った。
案の上、誰もいない園庭に羽ばたく。
そして、「追いかけて」と言うが、
もう、私はそのとき体力の限界を迎えており、
「まみこ先生、ムリ。
めっちゃ眠たい。」
といって、芝の上に寝っ転がった。
そのとき見た空が、あまりに美しかった。
白い園舎の壁と蒼い空。
高知の空は、澄んで高い。
「ほら見て、白に青、すんごいきれい。」
なんというか、予想外の展開に様子を見ていた彼も、
隣に寝転ぶ。
「ほんとや。」
と、二人で空に見入った。
と、ここが神様のすごいところ。
なんと飛行機雲が下から現れた。
その先には、飛行機。
青空にすっと一筋。
すっかり嬉しくなって、二人で飛行機の後を追う。
と、彼が私の上に乗ってきた。
抱きしめると、ほっぺにキスのようなものをしてきた。
私たちの間には、常にある種の緊張感が流れているので、
親愛100%の何か、というわけではない。
そして彼は、キスしたあとの私の顔を、自分の手でぬぐった。
私は、彼のこういうところが、心底好きである。
彼が持つ人との距離感や根底にある紳士的なところが、
たまらなく好きだと思う。
そのあと彼は、大口で私の顔を噛んできた。
はは。
それで、そのおおきな面積ごと手でまた拭おうとしたので、
「化粧が取れる。」
と笑ってよけると、「化粧って何?」と聞いてきた。
それから、彼は真横の雲梯を渡り始めた。
どうも、私の上にそのまま飛び乗ってやろうと画策して、
バランスを崩し、こけそうになった。
ざまぁみそづけ。
だけど、蒼い空に彼は映えた。
「おぉ、いいねぇ、白い壁に蒼い空、動く身体、
すごくいい!」
というと、とても嬉しそうだった。
いろいろあるわね。
いろいろ。
だけど私はあなたが好き。
ずっと、一緒にいられるといいな。
子どものすてき。