朝一番、職員室に来て、
先生たちの机の上に裸足で上がることが日課だった彼も、
随分と落ち着いてきた。
しかし、時々確かめなければならない。
ぼくは、認知されているだろうか。
ぼくのことを、まだ好きだろうか。
ぼくは、この園に受け入れられているのか?
自分が所属する園の長が、自分をどう思っているか。
これは、存在のサバイバルを続けている者にとって、
非常に重要なことである。
ある日、また机に上がって騒ごうとした彼に、
ドウモトエンチョウは、こう言った。
「もう、どんな君でも、
先生らぁが大事やってことわかったろう。」
すると彼は、こくんとうなづいた。
お、うなづいた、と思いながら、
「ほんなら、もう、だめやってことは、
だめなんやから、自分でやめないかん。」
というと、
彼は、ものすごくバツの悪そうな表情をして、
黙ってうなづいた。
あぁ。
こんなところまで来れたんだな。
と思った。
バツの悪そうな顔は意外だった。
私たちが思った以上に、彼にいろんなことが響いているんだろう。
生活発表会では、よく頑張った。
恥ずかしくてたまらない気持ちをおさえるために、
彼は、舞台そでに隠れていて、自分の出番のときは、
真っ赤になりながら、頑張った。
そして、出番が終わった後、暴走しかかる自分をおさえて、
飛び出した先にあったストーブであったまるフリをした。
劇の真っ最中に、舞台から下りてストーブであったまる、
という図には、どこかしらユーモアがあった。
そして、その背中は、とても小さくて、丸くて、愛おしかった。
荒波もいつか静まる。
子どものすてき。