朝一番で、彼を迎え、描くことにする。
なにしろ、私にはなかなか時間がなかった。
すぐに、下書きの別の紙に書くという。
鏡も要求する。そして、わりにすんなりと輪郭と目を描いた。
あ、パターンにできたなと思った。
まゆ毛はなかった。
そして、たいへん喜ばしいことに、
鏡を見ながら、彼は自分で鼻を三角で描いた。
私の提案するかたちでは腑に落ちなかった鼻を、
自分なりに表現したのである。
それは、彼の満足の行く形であったようだった。
ほめまくるエンチョウドウモトマミコ。
笑みがこぼれる。
そして、口を描いた。
さぁ、身体。
まず、どんな食べ物が好きか尋ね、それが通る道はどこか尋ねる。
そこから、首がかけた。
さぁ、次は体幹。
そこで、四角を描いてみせる。
食べ物が入るおなかと、ドキドキする心臓が入っている四角。
肩からでる、長く細い四角、すなわち腕。
わりに、すんなりと描いていく。
顔の方が難しいのだろう。
それから、手を描く。
なみなみなみなみなみ、とリズムよく5回描いて見せる。
真似して描く。
一個がおおきくなりすぎて、ちょいと不揃いなのが気に入らず、
号泣しかけるが、周りを見ると、第一5本かけてないし。
「5本かけるなんて、天才や。」というと、落ち着く。
そうして、足も描き、靴も描き、なんとか人ができあがった。
よくやった。
本人は、もう十分。
と疲れた様子。そうであろう。
しかし、君。
時間がないのだよ。
もう、卒園式はそこなのよ。
まみこ先生、あさっておらんし。
忙しいのよ。
というわけで、午後もやろうと誘う。
疲れちゃって、もういやという雰囲気に、
考えちょってや、といって別れた。
そして、午後、さぁやろうと二人で座る。
もう、やりたくないという感じではあったが、
とにかく、身体から行こうか、といって、
輪郭をすでにかいた本番の紙を目の前に置く。
今度は、鉛筆を渡した。
消しゴムも用意する。
首を描き、身体を描く。
テレビみたい~、
と号泣する。
たしかに、とてもテレビのような体幹であった。
消したらいいやんか。
もっと細くするのね。
といって、消し、描き直す。
そして、腕も手も、足も、靴も描く。
その勢いで、顔へ。
わりに自信を持って描いた。
鉛筆で描いたところを、墨で上から描く。
本人のなかに、できていく感覚があるようだ。
顔が集中していて明るい。
できた!
よくやった!
後は、色だけや。
そして、私が去った後、
彼は、なんと色も塗って仕上げた。
肌を絵の具で塗るときも、とても集中していたそうである。
波に乗ると、子どもってすごい。
よかった。