最近の私の悩みは、
子どもに怖がられることである。
やまんばであることがバレているのか!
さて、Rちゃんは4月当初から、
私をものすごく警戒する人の一人だった。
基本的に、私は2歳のみなさんが起こしまくる事件を担当しており、
事件が起こったら来る人というのも関係しているだろう。
そんなわけで、中にマグマのような熱い魂を持ちながら、
それを一向に出さず、
理知的に毎日を過ごすRちゃんは、
私のことを最大に警戒していた。
以前、お友だちに叩かれた後に、
「やられた」と私に訴えに来て、
「ごめんね」「いいよ」のやりとりをやりはしたが、
その後、通りざまにやり返していた姿を見て、
「やっぱり。」と妙に嬉しくなったものである。
彼女は、朝早く来て、
お父さんと軽快にタッチをして、
一人で製作を始める。
テープでがっちがっちに何かを留めたり、
塗り絵に集中したりする。
それが、彼女のルーティンで、淋しさを埋める作業であった。
一番落ち着く、ということである。
若干、近寄るなという雰囲気も感じる。
だが、Rちゃんは、
本当は淋しい気持ちも持っていて、
どこかでスキンシップを望んでいるはずだと思っていた。
以前、カバンのチャックを閉めるのに、
ものすごく長い時間、
一人で格闘していた姿を見て、
感心するとともに、
気づくのが遅れて申し訳なくも思い、
強い気持ちで頑張っている彼女をほぐしたいと願っている私であった。
だが、彼女の警戒心ぶりは半端なかったので、
私では無理だった。
ブランコを乗っていた時に、
妙に悲しそうな顔をしていた時も、
「あ~、今抱っこだな」と思ったが、
本人がその涙をぐっとのみ込んで遊び始めたのを見て、
「抱っこしようか」とか言っても、焼け石に水だな、と思った。
そんなわけで、私は、とにかくRちゃんを気にかける作戦に出た。
特に、彼女が作ったものの最後を見届け、
それに声をかけ、
担任の先生にも、朝、一人で作っているものを気にかけて言葉をかけてくれと頼んだ。
いろんなところで、
Rちゃんの名前をたくさん呼んだ。
そして、お父さんに話をしながら、
「いや、実はすっごい抱っこしたいんですけど・・・、
よくがんばってるんです。」
と、横で聞いているRちゃんにラブコールを送ってみたりした。
私も必至である。
Rちゃんは、笑って「いや~。」という。
そうして、すこしずつRちゃんが変わってきた。
一人で製作をするよりも、
私の傍にいるようになった。
それで、「ここに座って。」と隣に座れというようになった。
「あ~、やっぱりそういう気持ちだよね、ほんとは。」と思った。
そして、私が動くと一緒に動くようになった。
ある日、看護実習生がやってきた。
すると、Rちゃんの顔が瞬時にこわばり、
動きが止まった。
なるほど。
知らない人が怖いのか。
と悟った。
そこで、「Rちゃん、大丈夫だよ。看護師さんって知ってる?
看護師さんになるために、幼稚園にお勉強に来たんだよ。
大丈夫、のぞみ先生来たから、のぞみ先生のところに行こうか。」
と声をかける。
まだ、この時期は私のもとでは安心できない。
ふたりで手をつないで、のぞみ先生のところに行った。
そんなこんなで、私とRちゃんの関係は随分とこなれてきた。
私は、Rちゃんにとって、
「朝必ずいる人で、気にかけてくれる人。」
という地位を獲得した。
うれしい。
続く。