抱っこについて、断固拒否の数が多い彼女だが、
あるとき、彼女をふざけがてらに、
抱っこ風にすると、こちらに向かってくるエネルギーがあった。
そうか。
本当は、抱っこされて安心したいんだな。
と思った。
それは、「私に」ではなく、「安心」のためである。
そのときから、私はできるだけ、
彼女に触れたり、笑顔を向ける回数を増やすようにした。
相変わらず、距離感が難しいので、
やりすぎると拒否にあい、そのときには、さっと引く。
私も、また彼女がかわいいあまりに抱っこしたいわけである。
ある、雷がすごく鳴った日、
2歳児をからかいに、いや、心配で見に行った。
一学期、集中的に2歳児のクラスに入っていたこともあって、
私をある種の安全基地のように思う子が何人かおり、
年長児のように、軽く入って軽く抜けるが不可能であることを痛感した。
私は、SちゃんとNちゃんの攻撃的なかかわりを受けながら、
できるだけ二人に触れることを続けた。
そうして、Nちゃんは、私に抱っこされるのは嫌だが、
自分からもたれかかってくることは、よしとし始めた。
そのとき、彼女は指を吸っていた。
別のお母さんが、お迎えに二人来たとき、
とたんに寂しくなって、Sちゃんが私の膝に乗り、
そして、Nちゃんが膝に乗った。
私はNちゃんの髪をなで、お腹を抱いた。
そうして、なんだかんだして、
下のお部屋に移動する時間が来た。
亀さんを見ながら、下に降りる。
そのとき、私が去っていくのがわかったSちゃんは、
「タッチ」と言ってきた。
あ~、彼女も自分で切り替えをするんだな、
と思った。
そして、私が去ることに気づいたNちゃんの心に、
ブワンとした重りがかかって後を引いていることがわかった。
私は、彼女と無言でタッチしながら、
彼女を裏切ったような気持ちになり、それがいつまでも残った。
自分を律する態度の裏にある、寂しさ。
彼女は、いつもお母さんとお父さんの話をする。
幼稚園という場所は、彼女にとって仕事のような場所であり、
そこにしっかりと立つために、気持ちを切り替え、気を張っている。
しかし、子どもの勤務時間は、
大人より長い。
幸い、担任が親戚にとても似ているので、
無条件に親和性を感じている。
タイプとしても、合うタイプである。
せんせいは、唯一無二の保護者にはなれない。
その代わりに、異なる人々として、
多くの愛を注ぐことができる。
そして、我々は、あと3年以上の「毎日」という時間を持っている。
穏やかに、ゆっくりと、Nちゃんの安心をつくっていくことができる。
毎日のすてき。