卒園式を無事、終えることができた。
これは、みんなが心配!した男の子の話である。
彼は、大勢の人の前に立つのが、大変苦手である。
ところが、卒園式では、みんなの前で証書をもらって、
手を挙げて夢を言い、思い出を発表し、みんなで歌を歌う、
という任務があった。
どれも、すごく緊張する。
そこで影錬を積む。
「はいっ!
そこで止まらん!
そのまま続ける!
まわりは、じゃがいも!じゃがいもと思うたらえい。」
と激を飛ばすと、周りの子に、
「かぼちゃやろう。」
と突っ込まれる。
どっちでもえいし。
そして、本番。
証書をもらう場面の彼は、クタクタであった。
無理です無理です無理です~。
という雰囲気で、立つことすら困難であり、
発表なんぞ、とんでもなかった。
私は、祝辞で、主に彼やその他をイメージしながら、
こう、語った。
物事はやってみないとわかりません。
まずは、やってみること、
そして、できるようになるまで頑張ること、
できなかったとき、それまで頑張った自分をほめること、
これが大切です。
この思いが通じたのであろうか?
彼は、思い出を語る時、すくっと立っていた。
お。
だが、言おうとする瞬間に、
むり。
と判断し、即座に担任に首を振って見せた。
そこで、担任が代わりに、発表した。
そして、歌のとき、彼は、大変しっかりと歌っていた。
そこには、とても前向きな表情があった。
私は、小さいけれど、大きな飛躍に目を見張った。
次の日、彼に会って、
「卒園式、頑張ったやん~。」
というと、即座に、
「歌わんかったらよかった~。」
といった。
ということは、彼はやはり、意志を持って前向きに歌ったのであった。
そして、そこで彼なりの乗り越え体験をしたのであった。
その顔は、晴れやかである。
卒園式の1時間には、そんな飛躍のドラマがあった。
子どものすてき。