10月に運動会は終わったが、
子どもたちの中には、終わらないものがあった。
年長あやめ組の心には、「負けてばっかしだった」という思いがあり、
お弁当の時間の団欒でそんな話になった。
「もう、運動会終わっちゃった。」という子どもたちに、
「そんなことないよ、また、挑戦すればいい。」という先生。
そこでばら組に、ひっぱりっことリレーの、
「ちょうせんじょう」を送った。
ハラショー。
なんて素敵なことだろうか。
ばら組の返事は、「うけてたつ!」
この言葉ほど、盛り上がってない子もいたのだが、
しかし、そんなこと言ってられるか。
毎年のことだが、
人前に出ることがとても恥ずかしかったり、
勇気がなかなか出せない子がいる。
でも、この日は違った。
Tくんは、一人で走った。
せんせいは、それが心の底から嬉しかった。
そして、もう一人。
その子は、並走してあげないと走れない子だった。
でも、先生はこう思った。
「もう、負けてもえいわ。」
それよりも、あなたが一人で、自分の力で走りきることが大事。
途中で先生は、並走をやめて、彼女を見送った。
彼女は、何度もせんせいを振り返りながら、一人で走った。
保育には、こんなふうに愛を込めて、投げ出す瞬間がある。
それは、希望という名の愛である。
「希望」は、とても難しい概念である。
「叶うのだ」と信じる心と、
「叶わないこと」のすべて引き受ける覚悟の間で、
それは生まれる。
焦らないと自分に言い聞かせ、冷静に見る心と、
頑張ってほしいと心底願う熱い心、
その狭間に、かけがえのない瞬間が生まれる。
せんせいの愛は、大きく、強い。
だといいね、みんな。
いつでも、どの子にも。
せんせいのすてき。