今年の年中さんは、「まる」という形に着目して、
作品展に取り組んだ。
Yくんの「まる」への思いから始まった取り組みだったが、
森では、丸い断面に着目して、活動をしてきた。
木や実の断面は美しく、自然と彼らの目を引く。
そうしてできた自然物による子どもたちの作品は、
大変すばらしいものだった。
丁寧さとバランス感覚とそれぞれの思い。
年中児の100パーセントが表現されていたと思う。
そして、森から身のまわりの「まる」に視点をうつしてみた。
ご家庭にご協力いただいて、生活の中の「まる」を集めてみると、
プラスチック製品がほとんどで、これには、考えるところがあったが、
ゴム製の派手な色の球体にくっつけると、
結果的にすばらしい現代アートになったのだった。
ファンシーでいきいきとしていて、
今にも動き出しそうな元気さがあった。
だが、ここにも先生たちの涙の努力があった。
何しろ、球体にくっつけるので、全然、くっつかんのである。
たとえば、ヤクルトの容器とか、ガチャガチャのプラスチックケースとか。
瞬間接着剤は、瞬間でくっついてくれず、
ある程度持っていなければならなかった。
そこで子どもの直観においつくために、とりあえずガムテープで貼って、
あとから保育者がくっつけた。
しかし、時間がたつとポロ。
と落ちることが何度も繰り返され、
先生たちの心は折れそうになった。
後半は、ドライヤーが導入され、
あらたにもっと強力な瞬間接着剤を買ってきてくっつけ、
ついでに私の指もがっちりとくっつけてくれた。
みちこ先生がはがし液を買いに行ってくれた程である。
そうして、あらゆる努力を重ねていても、
ポロ。
という音が、断続的に響く。
しかし、先生たちは4人がかりで交代しながら、
頑張った。
だがしかし、どうあっても落ちてしまう代物もあった。
もうあきらめるしかないか・・・、
という雰囲気が漂よったが、
担任のA先生が、
「それは、Mちゃんがすごく頑張って作ったので、
(ぜったい)つけてあげたいです。」
といい、それを聞いたN先生も、
「それは、つけんといかん。」
といった。
子どもたちの心に寄り添い、
子どもたちのエネルギーに触れ、
自然に湧き出る保育者としての心。
毎晩、どんなに遅くなっても、手を抜かない先生たちの姿には、
いつも子どもを思う心が見える。
そうして、やっとくっついた!
と安堵感に包まれて帰った次の日。
見事に、ボトボトと落ちてくれていた。
ショック。
というより、「そうすか。」という気持ちだった。
だが、バザーの前日準備で来てくださっていた保護者の方々は、
みんなそれが「展示かと思った」と言ってくれた。
なるほど。
確かにそう見える。
すると、アートな感性豊かなSさんが、
「生れ出て、剥がれ落ちるというような、
生と死、みたいなものを感じる」
といってくれた。
これは、非常にビンゴであった。
まさしく現代アート的メッセージではないか。
Sさん天才。
というわけで、
どうしても、つけておきたいものをつけて、
落ちたものは、もう、落ちたままに、
ということで落ち着いた。
初めての試みで、予想がつかず、
大変てんやわんやだったが、
若草幼稚園にポップで生き生きと弾む現代アート、
という新たな歴史を刻むことができた。
なんでも、やってみんとわからんです。
若草幼稚園のすてき。