専門家の彼は、うんうんと話を聞いてくれ、色んなアドバイスをくれた。
このとき、改めて思ったことがあった。
私の頭のなかで、シマヘビは「ヘビ」だった。
だが、彼にとっては、シマヘビは「シマヘビ」であり、
厳密にマムシやアオダイショウと区別される「シマヘビ」だった。
そこが、専門家とド素人の違いだろう。
そして、「シマヘビ」は気性が荒く、繊細なので、飼育するのは難しいとのことだった。
それに対して、アオダイショウはもっと大らかで適応しやすく、
餌付けもしやすいとのことだった。
餌付けか・・・。
ネットで見た冷凍ラットを与えるシーンは、割とキツイ。
無理、と内心思ったが、
栄養としては完璧らしい。
シマヘビとアオダイショウの個性の違いを聞いて、人と変わらんなと思った。
彼にとっては、さらにシマヘビの次郎と三郎では性格が異なるのだろう。
一人一人の子どもを理解していくことが大切であるように、
個体理解を通して正しい飼育は可能なのだ。
餌に、ヒナとカナヘビを与えた話をすると、
「うーん、やっぱりシマヘビはカエルかトカゲなんだよね~。」
という答えが返ってきた。
「そうなんですか。カナヘビあげたんだけど・・・。」
「いや、カナヘビじゃなくて、トカゲ。」
私にとっては、トカゲとカナヘビはほぼ同じであったが、
シマヘビにとっては違うらしい。
お好み焼きかたこ焼きの違い?
いや、タイかサバの違いだろう。
そんなわけで、専門家の見方に深く感じ入った次第である。
諸々私の話から推察するに、彼の見解では、
ファーストコンタクトが悪かったということだった。
実は、セカンドコンタクトも最悪だった。
ファーストコンタクトでは、気持ちよく寝ている池から無理やり起こされ、
袋に入れられて、持ち帰られた。
横で聞いていた理事長が、妙に反省する。
そして、セカンドコンタクトでは、逃げないようにつかまれ、
理事長の手がふるえるほど全身で抵抗していた。
その後、なんだ、踏めばいいんじゃんと腕プルプルの理事長は、
足で頭をおさえていた。
そして、逃げようとして水にあたったためか、
急にシュルシュルととぐろを巻き、意気消沈に入ったシーンへと続く。
そんなわけで、疲労困憊したシマヘビは、
「もう僕死にます」モードに入ったのであった。
したがって、今回はもうあきらめて、
子どもたちと観察してからシマヘビをリリースし、
次はアオダイショウを見つけましょう。
という結論となった。
もう、アオダイショウもいや、と本心では思っており、
シマヘビを帰すことになって、心底ほっとした。
専門家のアドバイスのおかげで、
子どもたちにはシマヘビとマムシの違いをしっかり教えることができた。
そして、森へ放すとき、先生たちもシマヘビに触って感動した。
そして、ぺりぺりと皮がむけているのを発見した。
森の報告でそれを聞いた私は、
なに・・・!
と動きを止めた。
脱皮しとったんか。
だから、動かんかったのか。
「なんや、もう数日粘ったら、脱皮見れたんやん!!」
というわけで、自分の共感の無駄遣いに、
してやられたと悔しがる園長ドウモトであった。
ヘビのすてき。